耳鼻科の病気

鼻アレルギー(花粉症)

概要

体内に異物が入ると、身体は免疫反応をおこし、その異物をやっつけようとします。様々な細菌やウィルスに感染しても、しばらくすると自然に回復するのは、こういう免疫力のおかげです。ところが、あまり有害でない異物が体内に入った時も、同様にこのような免疫が働いてしまうことがあります。それがアレルギーです。アレルギーとは、いわば免疫の過剰反応なのです。

アレルギーには5種類のタイプがありますが、鼻アレルギーはそのうちの1型アレルギーでおきる病気です。有名な花粉症は、鼻アレルギーのひとつで、スギなどの花粉に対して鼻がアレルギーをおこしている状態を言います。

鼻アレルギー

これが1型アレルギーを図で示したものです。抗原(アレルギーをおこす元になる物質、例:スギ花粉)が体内に最初に入ると、それはマクロファージと呼ばれる細胞に取り込まれ、マクロファージは抗原提示細胞(APC: allergen presenting cell)になります。このAPCから出されるサイトカイン(細胞を活発にしたりその活動を抑えたりする物質)によって、ヘルパーT細胞やB細胞といったリンパ球が活性化されます。B細胞はまた、活性化されたヘルパーT細胞の出すサイトカインによってもさらに活性化されます。この活性化されたB細胞が、この抗原に対する抗体を産生し、これら抗体は肥満細胞という細胞の表面にくっついて、次に再び抗原が体内に入って来るのを待ち受けているのです。

次に抗原が入って来た時には、この抗体のくっついた肥満細胞が集まって来て、表面の抗体と抗原がくっついて反応をおこします。そうすると、肥満細胞の細胞膜の性状が変化し、脱顆粒という現象がをおこるのです。肥満細胞は、その細胞内にヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサンなどの化学伝達物質を持っています。脱顆粒というのは、これらの化学伝達物質が細胞外に放出されることを言います。

この放出された化学伝達物質が鼻粘膜を刺激したり、炎症反応をひきおこしたりして、アレルギーの様々な症状がおこるのです。

症状

かゆみ(くしゃみ発作)、水様性鼻汁、発作性鼻閉が鼻アレルギーの3大症状です。この症状のうちどれが強いかは、人によって差があります。この他に、のどのかゆみ、目のかゆみ、皮膚のかゆみ、咳、などを伴うこともあります。

検査、診断

鼻の中を診察すると、鼻の粘膜が蒼白で水っぽく腫脹し、透明の水様性鼻汁が貯留しているのが鼻アレルギーの特徴ですが、かならずしもこれにあてはまらないこともあります。特に花粉症では、粘膜は蒼白よりも発赤していることも多いです。

その他、診断の助けになる検査として、鼻汁好酸球検査、皮膚テスト、RAST、RIST、鼻誘発テスト、などがあります。専門用語の説明のアレルギーの検査の部分を参照してください。

治療

治療としては、抗原回避、除去、薬物療法、免疫療法、手術療法などを病状に応じて組み合わせて行います。

【抗原回避、除去】
アレルギーは抗原に反応して起こるものですから、その抗原にできるだけ触れないようにすると、おのずと症状はよくなります。ダニは、ふとん、カーペット、押し入れ、ソファーなどの中にひそんでいるので、これらの部分を普段から良く掃除する必要があります。具体的な方法はこちらをどうぞ。

また花粉類は季節性がありますから、花粉情報などを参考にして、花粉量の多い日には外出をさけるとか、マスクを利用するなどしてさけるようにします。具体的な方法はこちらをどうぞ。

【薬物療法】
アレルギー治療の主体となる薬物は、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー剤とステロイド薬です。これらに関しては医学用語説明の中の抗ヒスタミン剤抗アレルギー剤ステロイド剤を参照してください。

この他の薬物として、肥満細胞の細胞膜を安定させるなどして、化学伝達物質が放出されるのを防ぐタイプの薬があります。インタール、ソルファなどがそうです。また一部の抗ヒスタミン剤には、この作用も合わせ持つものもあります。

鼻汁の分泌が多い時には、アトロベントなどの抗コリン薬の点鼻が効果がある場合もあります。

鼻閉の強い時は、プリビナ、コールタイジンなどの血管収縮剤が効果がありますが、これらの薬は乱用すると、点鼻薬性鼻炎をおこし、これらの薬が効かなくなるだけでなく、反動でひどい鼻閉を来すことになるので、要注意です。

【手術療法】
アレルギーをおこす粘膜をレーザーで処置することにより、アレルギーをおさえる方法が近年注目をあつめています。くわしくは医学用語説明のレーザー手術を参照してください。

他にも直接下鼻甲介粘膜を切除する方法や、電気凝固や凍結させることによって、下鼻甲介粘膜を壊死させる方法が用いられることがあります。

【免疫療法】
抗原の除去が困難で、薬物によりコントロールのつきにくい患者さんが対象になります。精製された抗原エキスを週1回皮下注射します。注入量 は極少量から少しずつ増やして行き、一定の濃度になったら、その量を維持していきます。こうすることによって、身体が抗原に対して慣れてきて、アレルギー反応を起こさなくなる、という原理です。

難点としては、精製エキスの種類が限られていること、医療機関側も患者側も通 院や準備などの手間がかかること、治療機関が長くなること、中止後再燃することもあること、などがあげられます。また、アレルギー反応をおこす物質を少量 とは言え投与するので、まれにショックを起こす可能性もあります。

現在、通院の手間を省こうという目的で、抗原を皮下注射ではなく、経口または舌下投与する方法が試みられていますが、まだ効果 については公表されていません。

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